面接リアル2026-07-06監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

SIer PMが事業会社面接で聞かれる「予算をどう握ったか」の答え方

「予算って、どうやって握ってたんですか?」——事業会社の面接でこう聞かれて、頭が真っ白になったんです。だって僕、見積もりは書いてたけど、予算を『握った』覚えはなくて……。

先日、こういう相談を受けました。SIer出身のPMの方が、事業会社の面接でつまずく典型的なポイントです。僕の体感値で言うと、上流経験を語れる人ほど、この質問で一度は足を止めます。今日はこの「予算をどう握ったか」という問いの正体と、皆さまが持っている経験をどう翻訳すればいいのかを、なるべく現場に接地して書いていきます。

まず結論から言うと、面接官が見ているのは金額ではない

まず結論から言うと、事業会社の面接官が「予算をどう握ったか」と聞くとき、知りたいのは金額の大きさではありません。個人的には、ここを取り違えると、どれだけ大きなプロジェクトの数字を並べても刺さらないと考えています。

彼らが見ているのは、「あなたはお金の使い道を決める側にいたのか、決められた枠の中で動く側にいたのか」という一点です。つまり、意思決定への関与度合いを、予算という具体的なレンズを通して確認しているわけです。

誤解がないように申し上げると、SIerで見積もりや稟議を通してきた経験は、決して意思決定と無縁ではありません。ただ、その経験が「握った」という言葉に翻訳されないまま棚に置かれているだけ。これは翻訳の問題であって、経験不足の問題ではないと僕は思っています。

なぜSIer出身者はこの質問で詰まるのか——2つの構造

詰まる理由は、大きく2つの構造に分解できます。

1. お金の「出所」が客先だったから

受託開発では、予算は基本的に客先が持っています。皆さまがやってきたのは、その予算に対して見積もりを出し、妥当性を説明し、承認をもらうこと。これは高度な仕事です。ただ、主語が「自社がこの投資でこれだけ回収する」ではなく「お客様の予算内でどう実現するか」になりがちなんですね。

事業会社では、予算は自社の投資です。使ったお金が売上や効率化で返ってくるかを、PM自身が説明責任を負う。この主語の違いが、「握る」という感覚のズレを生んでいると考えています。

2. 承認プロセスを「握った」と認識していないから

もう一つは、自己認識の問題です。皆さまは実は、けっこう握っています。見積もりの前提を組み、バッファをどこに置くか判断し、追加要件が出たときに費用交渉をし、社内の原価と客先予算の間で着地点を探る——これは全部、お金の意思決定です。ただ「言われた通りに稟議を回しただけ」と自分で矮小化してしまう。ここが、もったいないところです。

SIerでの実際の行動翻訳後の語り方
見積もりのバッファ設計リスクを金額に換算し投資判断の材料を作った
追加要件の費用交渉スコープと予算のトレードオフを主導した
原価管理・工数調整限られた予算で成果を最大化する配分を決めた
客先への投資対効果説明ステークホルダーに投資の妥当性を説明し承認を得た

「握った」を語る3つの分解軸

では具体的に、面接でどう語ればいいか。僕が社内で使っている整理ですが、以下の3つの軸に分解すると、SIerの経験がそのまま「握った」経験に変換できます。

  1. 金額の裁量:いくらまでを自分の判断で動かせたか。全額を握っていなくても「この範囲は自分の判断だった」と言える線引きがあれば十分です。
  2. トレードオフの主導:予算・スコープ・納期の三つ巴で、何を削り何を守るかを誰が決めたか。ここで「自分が選択肢を作って提案した」と言えると強い。
  3. 説明と説得の相手:誰に対して投資の妥当性を説明したか。客先の役員でも、自社の営業部長でも構いません。決裁者を動かした経験は、そのまま事業会社で通用します。

この3軸で棚卸しすると、「予算を握った覚えがない」と思っていた方でも、たいてい2つは語れる材料が出てきます。

語り方の型——縦・横・斜めで一つのエピソードを厚くする

経歴は縦・横・斜めで語れ、というのが僕の持論ですが、予算エピソードも同じです。一つの案件を三方向から厚くすると、聞き手の解像度が一気に上がります。

たとえば「追加要件で当初見積もりを30%超える見込みだったが、優先度の低い機能をフェーズ2に切り出す再設計を提案し、客先の年度予算内に収めた」——これは立派に予算を握った話です。金額の大小ではなく、判断の主体が自分だったことが伝わればいい。

やってはいけない語り方

最後に、逆効果になる語り方を挙げておきます。これは僕が面接同席の場で何度か見てきた失敗です。

一つは、金額の桁で勝負しようとすること。「10億円のプロジェクトを担当」と言っても、その10億の使い道を自分が決めていなければ、規模の話で終わってしまいます。もう一つは、「予算はお客様が決めることなので」と最初に線を引いてしまうこと。これは謙虚に聞こえて、実は「私は決める側にいませんでした」と自己申告しているのと同じなんですね。

誤解がないように申し上げると、嘘をつけと言っているわけではありません。自分が実際に触れた判断の範囲を、正しい言葉で語り直すだけです。それだけで、印象はまったく変わります。

(結論)

つまり、「予算をどう握ったか」という質問は、皆さまの経験を否定しにきているのではなく、翻訳を求めにきているのだと僕は考えています。SIerで見積もりを組み、トレードオフを判断し、決裁者を説得してきた——その行動の主語を「自分が決めた」に置き換えるだけで、それは立派に予算を握った経験になります。

金額の大小で怯む必要はありません。裁量・トレードオフ・説得相手の3軸で棚卸しし、一つのエピソードを縦・横・斜めで厚くする。個人的には、この準備をしておくだけで、面接の空気が変わる場面を何度も見てきました。皆さまの経歴は、思っているよりずっと「握って」いるはずです。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

PM・PM隣接職に特化した人材紹介「PM Quest」を運営。IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等はPM Quest独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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